2013年3月29日金曜日

「強さ」と「弱さ」

復職を決めてリワークを卒業された方が、今日もお一人おられました。
その方がリワークにいると、自然とリワーク・ルームの雰囲気が柔らかくなり、穏やかな気持ちになれました。
それは、その方を囲んでのお別れ会にて、メンバーの皆さんから口々に、その方を評して言われたことです。
振り返ってみると、その方は飾らずに、かっこつけずに、素直な気持ちや思いを、プログラムでも話しておられました。

しかし、当のご本人はあまりそういう柔らかくて穏やかな自分について自覚されていなかったということでした。

むしろ、職場にいるときの自分は、それとは逆のようだったと振り返っておられました。

おそらく、その方の柔和な部分や素直な部分は、本来その方に備わっていた部分だったのだと思います。ただ、休職に至るまでに、その方のそういう自然で生き生きとした部分が、いつのまにかこわばり、あたかも失われてしまったかのように見えていたのではないでしょうか。

リワークでの活動とメンバー同士の信頼関係を通じて、その方が持っていた素直な部分や穏やかな部分がまた動き始め、それが周りのメンバーの皆さんにも伝わっていたのだと思います。

この話しを聞いていて、人には「いろいろな自分」がいるのだな、と改めて思いました。

このことは、今週のリワークプログラムの「自己分析」でも感じたことでした。

自己分析では毎回テーマを設定し、メンバー全員でフリートークをして、その話し合いの中から、自分自身に対する何らかの気づきが生まれることを目的としています。
今回の「自己分析」のテーマは、『休職を巡って自分自身を考える』というものでした。

いくつもの印象的な話しがメンバーの皆さんから話されたのですが、「休職という経験をして、自分の中に、いろんな自分がいることに気づいた」という内容が、何人かのメンバーさんから共通した発見として出てきたのです。
「悪い自分」と「良い自分」。
「攻撃的な自分」と「優しい自分」。
「大人の自分」と「子供の自分」。
「かっこつける自分」と「かっこ悪い自分」。
  ………。
そして、こうしたそれぞれの自分がお互いに反目し合うのではなく、お互いに手を結びあえたとき、自然な気持ちになれるのだ、ということが話されていました。
「いろいろな自分」が、自分の心に住んでいることを自分が許せたとき、全体感を感じられるということなのだと、この話を聞いていて思いました。

あるメンバーさんは、「休職するまでは、自分の弱い部分を認めることができなかった。そういう自分を認めることは辛かったのだ」という内容を自己分析で話されました。だから、カッコつけなくてはいけなかったのだ、と。
でも、それもどこかでは辛いとその方は感じていたのでしょう。「そういう自分だけでは辛いよ」という、もう一人の自分からのメッセージが、休職前には送信されていたのかもしれません。

その方は今回の休職を通じて、そうした自分の「よろい」が少しずつ緩み、自分の中には、「大人の自分」で「かっこつけの自分」だけでなく、「弱い自分」もいれば、「子供のように頼りない自分」もいることを発見し、そういう自分を許すことができるようになったようでした。

「強い自分」・「できる自分」だけが心を支配したとき、人は他人に対して冷酷で、冷たい勝利者になっているのかもしれません。
自分の中にある「強い自分」・「できる自分」だけを人が頼りにするようになったとき、でも、その強さとは、偽物なのかもしれません。一見強いように見えても、本当はとても「もろい」ものなのかもしれません。

本当は自分の中に住んでいた「弱い自分」・「できない自分」に目を閉ざさず、切り捨てず、彼らを拾い上げられた時、その人は生き生きとした存在になるのかもしれません。「弱い自分」に出会って、それが心に住むことを受け容れている人は、そのことそのものが、その方の魅力を形づくっていくように思います。
そして、それこそが、本当の強さになるように思えます。

今日卒業されていかれた方から発せられていた魅力とは、そういうものだったのだと思うのです。














2013年3月22日金曜日

こころにアクセスすること


 普段、生活している中で、私たちは今置かれている状況の中で、身動きが取れないように感じることが少なからずあると思います。

 それが一体何なのか考えてみるけれど、考えれば考える程よくわからなくなったり、よくない方向に考えが進んでいってしまったり、一人で考えていると、得体のしれない不安に押しつぶされそうになってしまうこともあるのではないでしょうか、、、?

 考えられるときもあれば、そうでないときの方が多いのかもしれません。

 それを考えないまま過ごすのか、考えることを避けるのか、それとも少しずつ考えてみようとするのか、誰かと一緒に考えてみるのか、それは人それぞれです。

 どうやって自分の気持ちに向き合っていくのか、どう感じているのかというココロにどのようにアクセスするのか、それは一筋縄ではいかないでしょう。

 言葉にできるものもあるかもしれないし、言葉に出来ないこともあるかもしれない。

 そういうものを表現する一つの方法として、アートセラピーというものがあります。

 先週のアートセラピーの時間には、個人でコラージュを作りましたが、今週はグループで一つの作品を作りました。
 グループでコラージュをするときには、一人一人の心に浮かんできたそのときの思いだけでなく、その人が人と関わるときのスタイルや、そのグループに対する思いや、グループの中での関係性も表れてくるように思います。

 どこからその作品に手をつけていけばいいのか、どんなものを切り抜きに選べばいいのか、誰が一番最初に糊付けしていくのか、他の人の貼っていくものを見て刺激を受けるものもあり、すごくいろんなことを考えなければいけない作業です。

 作っている時に何を感じるか、出来上がった時にどう感じるか、改めて見てどう思うか、さまざまなプロセスがそこにはあらわれてくるのではないでしょうか。

 その一人一人が感じていたものを、再びグループでディスカッションすることで、さらにそのグループ内が凝集され、理解され、活性化されることもあります。


 今回の作品では、出来上がった後につけたタイトルは『時をかける彼女』になりました。
 ディスカッションした中では、さまざまに影響される部分があったり、誰かと誰かの間を埋めたくなったり、誰かが占めている空間の中に自分が要素を加えてみたいと思ったり、そういったが気持ちが動いていたようです。
 そして、“つながり”というキーワードが出て来ました。
 
 それは、かけがえのないメンバーさん同士が今感じておられる、皆さんにとって、とても大切なハートのように思いました。

 言葉では伝えられない、言葉には表せない、でもそれぞれに共有していたつながりがあったのではないでしょうか。
 

2013年3月15日金曜日

リワークでする仕事〜卒業される方の言葉から〜

リワークを卒業され、復職を決められた方がおられました。
今日は、いつもより長めの「終わりの会」です。(CRESSでは、一日のリワークの終わりに、「終わりの会」をしています)。
終わりの会ではメンバーの皆さんから、その方への贈る言葉を伝えました。
そのレスポンスとして、その方から返される言葉は、今後復職を目指そうとされているメンバーの皆さんにとって、重みがあり、良い刺激を喚起するものでした。
祝福の言葉がメンバーの皆さんから贈られるとともに、卒業という別れに伴う切なさも漂います。
春は出会いの季節でもあり、別れの季節でもあります。

メンバーからの贈る言葉に対して、その方が言われた言葉でとても印象的な言葉がありました。

「リワークを“第二の職場”だと思って、通っていた」と言われたのです。

第二の職場としてのリワーク。それは、受け身ではなく、主体的にリワークに参加し、経験を重ねて学んでいこうとする意識だったのでしょう。

これもその方が言われたことなのですが、同じ「職場」ではあっても、リワークは、会社など自分が勤めている職場と違っているところがある、というのです。
何が違うのか。
それは、自分の弱い部分、ダメな部分も、リワークでは言える。そして、リワークではそのことを怒られたり叱られたりはしない。
そういう意味での自由な場所である、という内容でした。

これはとても大切な気付きです。
自分がこれまでの人生で、心のどこかでは知っていたこと。
でも、それは、職場など外の世界では一般に評価されず、「ダメ」で「弱い」とみなされるような自分の部分。
だから人は、心のどこかでは弱い自分の部分を知っているのに、まるでそんなところはないかのように振る舞ってしまう。
確かに、誰だって、自分の弱い部分やダメな部分を他人に知られたくなどないでしょう。
それはとても恥ずかしいことだし、叱られたり、ダメだと烙印を押されてしまう怖さを伴うからです。

でも、リワークでは、そういう自分の弱さやダメだと感じているところをこそ、一緒に考えていくのです。
リワークで一緒に見て、ともに触れていこうとする心の部分です。
例えば、「自分に自信が持てない」、「課題に手を付けることができない」、「仕事を後まわし後まわしにしてしまう」、「一旦手を出すと、とことんやってしまって、生活が崩れてしまう」、「攻撃的な気持ちが出てきて苦しくなる」、「責任を担うことになりそうになると、逃げたくなる」……。
これらは、どれも、リワークで一緒に考えていく大切なその人のこころの部分です。
隠したり、逃避したり、なかったものとするのではありません。
そういう部分にこそアクセスしようとします。
どうしたらアクセスできるかを一緒に考えます。
そして、少しずつでも変化していくにはどうすればいいか、経験から学んでいこうとします。

それが第二の職場であるリワークで一緒にやる仕事――こころの仕事――です。

今日、卒業される方が言われた言葉は、第二の職場であるリワークが、どういう仕事をする場所なのか、あらためて考えさせられるものとなりました。




2013年3月8日金曜日

暖かくなってきましたね

 急に気候が穏やかになり、街を行き交う人の服装も、春めいていますね。
気温の変化や、花粉などの飛散で、体調を崩されておられる方も少なくないのではないかと思い巡らせています。

 春を目前に、みなさんはどのようなことを考えたり、計画されたりしているでしょうか?
 4月からは新年度のはじまり。
それに向けて、何かやってみたいなとか、今これをやっておきたいな〜など、色々思われている方もいらっしゃるのではないかと思ったりします。

 予定を立てることや、何かやってみたいことを探すというのも大切な一方で、
 現実的に今、自分がどの程度のことができるのか、しっかり自分を見つめるというのも大切ですよね。
 心や身体の健康状態が徐々に回復してくると、ついついハメを外してしまうということが起こりやすくなってきたりします。

 自制ばかりでは楽しくありませんが、疲れすぎないように限度を考えながら体調管理や自己管理ができるようになると、これまで以上に時間を有効に使えるようになるかもしれませんね。

 心のブレーキをかけながら運転するのではなく、常に余裕をもった安全運転を心がけてみてはいかがでしょうか。

2013年3月1日金曜日

リレー小説をつくりました

今日から三月ですね。春の近づきを感じます。

さて、今日は、先日のアートセラピーの時間で作った「リレー小説」について、ご紹介したいと思います。

リレー小説ではグループ全員で小説を書きます。
そして、あたかもリレーのバトンを手渡すように、順番にストーリーを作るのです。
① まず、最初の人が、小説のタイトルと冒頭の文章を作ります。
② 最初の人が作った小説は、二番目の人に渡されます。二番目の人は、一番目の人が作った小説の冒頭を受けて、小説の続きを書きます。
③ 以下、この作業を、グループのメンバーが順々にしていきます。
④ そして、最後の人が、小説の結末を書くことが求められるのです。

こうして次々と手渡される文章の流れが、小説のストーリーとなります。
一体どういう物語が出来上がるのか、どんな結末となるのかは、最後まで誰にもわかりません。
リレー小説に参加しているメンバーは、最初の人が考え出したタイトルを反映させたストーリーを作ることを意識する必要があります。
自分の番が来たときには、これまでのメンバーが作り上げてきた物語の流れを尊重しつつ、いかにストーリーを紡ぎだすかを考えます。
これまでの流れをそのまま受けて展開することもあれば(「起承転結」の「承」)、それまでの流れを少し変えることでストーリーに新鮮さと新しい流れを生み出すこともあるのです(「起承転結」の「転」)。
そして、最後の人は、どの方も苦労と苦心して、結末を考えておられました。

リワークでは、メンバーとスタッフの総勢12名が、それぞれ小説のタイトルと冒頭を書き、それをリレーしていきました。全部で12作の小説が出来上がりました。CRESSで作ったリレー小説集が出来上がりました。

どれもユニークで傑作揃いでした。今日はその中の一つを紹介したいと思います。
小説のタイトルは、「にじ」です。
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にじ

 私が外出する時は決まって雨が降る。今日も今から大切な約束があるというのに、朝からすんごい雨……。(Aさん作)
 洗たく物は乾かないし、髪のセットも決まらない。雨の日は気分が憂うつだ。(Bさん作)
 しかし、『大切な約束』がある。憂うつに感じる時間など私には存在しない。(Cさん作)
 憂うつを考えていると約束の時間が過ぎてしまった。(Dさん作)
 いつも私の心は、行ったり来たりする。傘を用意して玄関を出ると、(Eさん作)
 みどり色の可愛いカエルがいた。そこで私は、昔読んでもらった『にじ』という絵本を思い起こした。懐かしくて、もの思いにふけていると、(Fさん作)
 この小さいカエルが一瞬、口を開いたように見えた。カエルが何か私に言っている!?(Gさん作)
 『カエルの唄が 聞こえてくるよ グワァ グワァ ゲロゲロ グワァグワァ……』そんなはずはない。何かが違っている。(Hさん作)
 よく分からないが、とりあえずカエルにキスをした。カエルはかわいいお姫様に変身した。(Iさん作)
 夢を見ているのか……? どうなってるんだ? 童話のクライマックスじゃあるまいし……。どこからともなくオーヴァー・ザ・レインボーの歌が聞こえて来た。よく見る周りにも小さなカエル達がたくさん居る! そして歌をうたっているのだった。(Jさん作)
 その歌声は私の憂うつな気持ちをみるみる晴らしてくれた。(Kさん作)
 遠くから声が聞こえて来る。気付けば目の前には彼がいて、どうやら電車の終点らしい。雨はやみ、彼の後ろには大きな虹がかかっていた。雨もまんざらではないわねェ、とクスリと笑うと、彼は小首をかしげて不思議そうに見つめるけれど、私は陽気に彼の手を引いた。(Lさん作)

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今回、12のリレー小説が出来ました。
CRESSのメンバーの繋がりが生み出した、12個の大切な作品です。





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